【40代50代の肩の痛みについて】

〈解説〉

frozenshoulder.jpg五十肩(四十肩)とは、40歳~50歳代を中心として、明らかな外傷はないものの、痛みのほか関節の拘縮、つまり関節周りの筋肉が硬くなり、動きに制限ができてしまった状態を指します。具体的には、痛みによって『電車のつり革につかまれない』、『ジャケットを着る時が苦痛』、『髪を洗うのに、腕を後ろに回しにくい』等、日常生活での動作に支障をきたすことがあります。 

いまだ五十肩の原因は一つに特定されていませんが、もとまち整体院で見る限りでは、五十肩のケースには慢性的な肩こりが関係しています。慢性的な肩こりは、主に棘上筋、棘下筋、小円筋、肩甲下筋といった筋肉にトリガーポイント(痛みの『引き金点』:TP)を生じさせます。これが激しい痛みの原因の一つと考えられます。

五十肩の症状があっても、『自分は肩こりを感じたことがない』と言うかたもいますが、それは『自覚が出なくなっているほどに日常的に肩こりがある』状態であることが、ほとんどです。 そのため五十肩の痛みの緩和には、こうした筋肉のTPを解除していくことが重要なポイントとなります。

五十肩の施術およびセルフケアは、その症状が始まってからの『期(時期)』に注意します。五十肩の病期として『痙縮期』、『拘縮期』、『回復期』という区分があり、一般的にはそれぞれ3ヶ月、6ヶ月、3ヶ月の計12ヶ月、つまり1年程度とされています。 しかしながら実際の五十肩の経過を観ると、トータルで1年半~2年間ほどかかっているケースもあれば、半年ほどでかなり軽快してしまうケースもあり、ケースバイケースです。

施術の現場では、病期のどこにあるのかを慎重に確認したうえで、実際に出ている痛みの度合いや頻度、可動域の制限の程度、発症にいたるまでの頚部や肩周辺の筋拘縮の度合い等を総合的に勘案しつつ、トリガーポイント・セラピーで施術をしていきます。

〈施術〉

五十肩の症状では、棘上筋、棘下筋、小円筋、三角筋、肩甲下筋、大胸筋等に、トリガーポイントがかなり高確率で認められます。そうしたTPを解除する施術を行なっていきます。

筋肉を緩和していくことで、痛みによって動かせなかった腕に、徐々に動きを付けていくこと(モビリゼーション)が可能となってきます。

肩関節の動きを改善していくための施術法には、肩関節の強制モビリゼーション、肩関節唇テクニック、肩下制テクニック、肩関節のPNF等があります。これらをトリガーポイントセラピーと併せて用いることで、五十肩の痛みを解除・軽減し、さらには再発の予防につなげていきます。

さらに、筋肉の硬さによって可動性を低下させている関節についてのアプローチを、行ないます(関節の矯正:CMT)。関節の固着化を、解いていきます。

筋肉の緩和操作とともに、可能かつ必要と判断される範囲で、可動域が狭くなっている関節を矯正します。関節の矯正には、関節可動域の拡大、自律神経のアンバランスの是正、痛みの閾値の適正化、等のメリットがあります。

※この関節操作において、いわゆる『パキッ』という音がすることがあります。キャビテーションといって、骨の鳴る音ではないのですが、この音が鳴るのがどうしても苦手な方や、低年齢、高齢の方等には行ないませんので、ご安心ください。

〈アフターケア〉

セルフケアの指導も併せて行ないます。いくつかの体操療法との組合わせになりますが、これは現在の痛みの緩和に加えて、『片側が治ったら反対側の肩にも発症しやすい』とされる五十肩の予防や、再発防止にも有効とされています。

痛みの時期を短縮したり、そのレベルを低く抑えていくために有効といわれるのが、以下に紹介するコドマン体操です。痙縮期以降で、強い痛みや自発痛が無frozenshoulder_002.jpgいときにアドバイスしているのがこの体操です。

①足を前後に広げ、左右も適度に間隔をとります。
②痛む方の手に重り(1㎏程度のもの。握りやすい、アイロン、ペットボトル、やかん、ダンベル等を推奨)を持ち、左右の足の間に入るように手を下げます。
③もう一方の手は、テーブルやイスなどに突っ張るようにして置きます。
④上半身から動かすようにして、手に持つ重りがふりこになるように揺らしていきます。

五十肩の改善には、もとまち整体院の施術で筋肉の柔軟性や関節の可動性を取り戻しながら、こうした体操法を日頃から継続していただくことが大切です。(もとまち整体院での体操指導の一例です。基本的に施術受療者を対象としておりますので、ご自身で行なう際は、注意して行なってください。)

五十肩の自己判断は、痛みを増長する可能性もあります。整形外科か、私どものような施術例の豊富な整体・カイロプラクティック院に、ご相談されることをおすすめします。

〈症例報告〉

【五十肩 50代・男性のケース】
Kさん(50代・男性)は、当整体院の患者さんのご紹介により来院。2ヶ月ほど前から、左肩を動かしにくくなり、腕を外側に上げると痛むので、整形外科を受診、『五十肩』の診断。Kさんは30年来のゴルフ愛好者だが、今回の発症後はゴルフを控えているとのこと。手、指のしびれ感などは、ない。

この五十肩は、統一の定義があるわけではなく、肩関節周囲炎とか癒着性関節包炎と呼ばれていることが多い。50歳代中心に、中高年者の肩関節周辺に炎症性の病変を生じ、肩甲上腕関節の機能不全をもたらす。 五十肩の原因は不明であるが、放置していても1年~1年半ほどで自然治癒することが多い。しかし厄介なことに、五十肩が片側の肩に発症・治癒の後、多くの場合他方の肩にも発症しやすいといわれている。

さてKさんだが、上腕部や肩峰付近に運動時の疼痛があり、そのため腕の挙上、肩関節の内旋時に特に自動運動が制限される状況であった。 上肢の挙上制限はそれほど強くはなく、頭の位置よりも上までは挙上でき、ある程度の可動性がある。むしろ、結帯障害といって、お尻側のポケットに手を入れてハンカチを取り出すような動作に困難を生じていた。

時期的には発症より2ヶ月経過とのことであり、痙縮期(急性期)から拘縮期(慢性期)への移行期と思われる。拘縮期では、他動運動により疼痛が出現しやすいが、むしろこの時期に、肩関節にある程度の動きをつけていくことの重要性を説明、了解をいただき施術を開始した。

施術は初めに、硬くなっていた筋硬結をリリースするために、肩甲下筋、肩甲挙筋、三角筋、棘下筋にTPT(トリガーポイントセラピー)を実施。『痛すぎませんか』との問いにも『むしろ、気持ちの良い痛さです』とのこと。併せて、斜角筋、上部僧帽筋、頭・頚板状筋にもTPTを施術。 これらの筋肉を十分緩和したうえで、肩関節唇及び関節包に柔軟性を与えるストレッチも行なった。

最後に、肩関節の強制モビリゼーションを試みた。 モビリゼーションは、(本人が痛みのために動かせない範囲を少しずつ越えて)肩の内旋・外旋を繰り返すもので、特に最初のうちは多少なりとも痛みが増すのが通常であるが、Kさんの同意のもと4回実施。回を追うごとに肩関節の可動性の向上を確認できた。 

これらの初回施術のあと、Kさんに立ち上がってもらい左腕を動かしていただいたところ、『あっ、後ろのポケットに手が楽にはいる!』と嬉しそうであった。『何よりも、首・肩周り、それに背中の上のほうも、たいへん軽くなりました』とのこと。

H.E.(ホームエクササイズ)として、肩回しエクササイズ、コドマンエクササイズ、指上り等をアドバイス。経過を見ながら施術対応していくため、定期的・継続的に通院されることを推奨し、初回の施術を終了した。

Kさんのケースは、五十肩のうちでも比較的軽度で、激しい夜間痛も手指のしびれ等もなかった。その後2~3日おきの集中施術を数度経て、Kさんは趣味のゴルフを再開するにいたった。腕の動きは、まったく元通りに痛みなし、とまではまだいかないが、現在はトリガーポイントの発生予防も兼ねて、不定期的にではあるが継続的に通院いただいている。
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※施術効果には個人差があります。